タイトル_なんようの匠たち
【梢 料理長】大江憲一郎さん
【梢 料理長】大江憲一郎さん
眼前に広がるのは首都東京の天の川に身を浸すような夜景、日中晴天に恵まれれば富士山まで見通すことが可能なパーク ハイアット 東京 40階にその店はあります。日本料理を提供する「梢」。あくまでも景色はより楽しむためのエッセンス、メインとなるのは豊かな日本を思い起こすような味わい・彩・香り…いずれも高みを極めた、ここでしか味わえない料理の数々。それは南陽出身の料理長の手によるものです。今回はパーク ハイアット 東京 日本料理「梢」の料理長、大江憲一郎さんをご紹介します。

” ──南陽で育った頃の思い出と言えば?

「いたって普通の子供時代でしたよ。田舎なんで自然と触れ合う機会は多かったですけど、それ以外だと実家が飲食店を営んでた事と、伯父達が和洋菓子店を経営していたのでよく餅や菓子は食べました。特にじんだんの団子なんかが印象深いですね。南陽では“ずんだ”ではなく“じんだん”と言うんです」
 屈託なく話してくれた大江さん。自然に恵まれた南陽での幼少期は、栗取りや山菜取りなど恵み豊かな出来事が多かったという。
“じんだん”は枝豆を潰し甘く味付けた餡で東北ではよく食べられ、“ずんだ”の呼び名が定着しているが、南陽では“じんだん”と呼び親しんでいる。
 どの団子より人気があるよねと言った大江さんの笑顔は、少年のように無邪気だった。

自然も豊かだが、スポーツもさかんな南陽市。大江さんは漆山中学時代、ソフトテニスで県大会優勝の経験もある。
豆の風味と甘みが美味しい「じんだん」。これを広めた「じんだん本舗 椛蜊]」創業者は、大江さんの伯父に当たる。

 

──肉や米など県産、南陽産も扱われていますが選定基準は?

「全てを私の目、舌で選んでいます。どこの地域だからという基準はありません。
 『梢』にいらっしゃるお客様は、ここでしか味わえない、上質な料理とサービスを求めていらっしゃいます。それに応えるにはやはりハードルは高くなる。
 今扱っている米沢ブランドの『米沢牛』や南陽産米の『夢ごこち』などの山形県産の食材も、とても上質と感じ長年使っています」

 料理人の鋭い眼差しがこちらを射抜く。
 パーク ハイアット 東京という世界的に著名なホテル、その中でも1店しかない日本料理店。国内外から訪れる客の期待に応えるために、“妥協”と言う文字は存在しない。
 生産者の信念、ものづくりのポリシーがそれら食材に現れると大江さんはいう。本サイト「匠」file.6で取り上げた黒澤ファームの作るお米「夢ごこち」は、その高いハードルを越えた一品だ。
日本料理独特の敷居の高さを感じさせず、かつラグジュアリーさを兼ね備えた、落ち着いた雰囲気の店内。
目も舌も楽しめる、趣向を凝らした料理。

 

──東京にいらして山形や南陽について見聞きする機会はありますか?

「地元の方に話を聞けば色々と面白いものがあるのに、普段の生活ではなかなか目に入ってこない。
 人々の口に上るにはまだまだアピールが足りてないんじゃないかと、私は思います」

 昨年末に“つや姫”のCMを初めて見たという大江さん。県内の盛り上がりは首都圏へやっと伝わり始めたようだ。
 自己主張が弱いとも言われる県民性、それは南陽でも言えることかもしれない。大江さんには東京から冷静な視線で山形・南陽を見ていただいたが、少々手厳しかった。

 東京の地で一人、より高みを目指す匠は、故郷南陽の声が大きく聞こえて来るのを待っている。
もしかしたら物理的な距離よりも、心の距離が重要なのかもしれない。

 

 

 

 大江 憲一郎(おおえ けんいちろう)

南陽市漆山出身
パーク ハイアット 東京「梢」料理長

酒田市のフレンチ、銀座の日本料理店等を経て、
1994年2月パーク ハイアット 東京「梢」の料理長に就任。
現在に至る。

パーク ハイアット 東京 梢

■2012年2月取材

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