タイトル_なんようの匠たち
file:3 【杵屋本店社長】菅野高志さん
file:3 【杵屋本店社長】菅野高志さん
南陽市宮内地区は「日本三大熊野」のひとつとして名高い熊野大社で知られ、古くより参詣に訪れる人々で賑わった地区です。そんな歴史ある宮内地区を発祥とする、創業二百年にわたって菓子製造を手がける「杵屋本店」。
県内産の原材料を積極的に導入し、添加物を極力廃する製法にこだわった姿勢は広く支持を集め、山形県、ひいては南陽を代表する和洋菓子として人気を博しています。そんな「杵屋本店」の社長、菅野高志さんをご紹介します。
注:菅は4画くさかんむり(艸部)の菅
ルーツは“熊野詣で”──杵屋本店さんは創業二百年とお聞きしましたが?

「もともとは “東北のお伊勢様”と呼ばれる熊野大社の参拝客の手土産にと、文化八年にお菓子を売り出したのが始まりです。その後、明治、大正、昭和と経て、戦後の混乱期には原材料の砂糖が入手し難いという事情もあって、山形市に店舗を構えたんですよ」
 それから半世紀以上、今では県内に二十店舗を構え、全国展開も活発におこなっている「杵屋本店」。
 その発展の秘訣、そしてその根底にある志をお伺いした。
大正6年当時の「杵屋本店」
今も同じ場所に居を構える「杵屋本店」1号店

 

皆の喜ぶ顔を求めて──時代と共に斬新な商品を開発されていますが、やはり家柄ですか?

「代々、新しもの好きなんですよ。戦後間もない時期にシュークリームやクリスマスケーキなど、当時としてはモダンな商品を販売したり、父の趣味がオーディオだったのもあって無料のステレオコンサートを開いたり。すべて、お客様に喜んでもらおうという気持ちの延長です」
 新商品を開発する際にも様々な試行錯誤を繰り返し、隠し味を盛り込んでいるんですと管野社長は言う。
 飾らないもてなしの心、細やかな気配りが、いかにも南陽の人らしいと感じた瞬間だった。
この夏からリニューアルした手提げ袋を見せてくれた菅野社長は生き生きとして見えた。
「秘伝豆」の生クリームをマシュマロに包んだ、アイディアが光るお菓子「雪まろ」。

 

宮内の魂、菓子に宿る──新しい商品開発を進める中でも、大切にしている部分などはありますか?

「やはり“熊野詣でにいらした方に喜ばれるお土産を提供したい”という宮内での創業当時の精神を忘れない事ですね。昔は今と違って、一生の間に何度も足を運べるものではなかったそうですから。そんな旅の思い出に残る品を作りたい。その心構えは今も変わっていないつもりです」
 現在は、契約を結んでいるブルーベリー農園の摘み取りを社員が手伝ったり、地元の酒蔵から買い取った酒粕を用いて酒饅頭を開発するなど、ユニークさの中にもしっかりとした地域へのまなざしが見える「地産地消」を徹底している「杵屋本店」。

 熊野大社を訪れる参詣客との「一期一会」を大切にしてきた、その思い。時を経て今なお息づく「宮内の誇り」を菓子に込めるその姿勢こそ、まさしく南陽の匠と呼ぶにふさわしい姿だと改めて実感しつつ、上山市の本社をあとにした。
オリジナリティ溢れる商品が並ぶ
明るい店内(写真は2号店)
ブルーベリーを摘み終えて、社員皆で記念の一枚。

 

 

 

菅野 高志(かんの たかし)

南陽市宮内出身
株式会社 杵屋本店 代表取締役社長
山形県洋菓子協会 会長

創業二百年を迎える和菓子の老舗
「杵屋本店」の社長として県内二十店舗はもとより、
全国的な展開も精力的におこなっている。

杵屋本店公式ホームページ

■2011年8月取材

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