タイトル_なんようの匠たち
file:2 【語り部】多勢久美子さん
file:2 【語り部】多勢久美子さん
南陽市漆山地区は、民話「鶴の恩返し」発祥の地として知られています。
漆山地区にある「夕鶴の里」では、語り部による昔話を聞くことも出来ます。そこで地域に根ざした昔話の語り部として活動する、多勢久美子さんを紹介します。
読み聞かせから語り部へ──民話の語り部をはじめたのは18年前だそうですが、それまで語りの経験は?

「とんでもない、それまで昔話なんてした事もなかったです。平成5年の4月、『夕鶴の里』のオープンと同時に『民話会ゆうづる』が発足した際、初代会長だった川合久男さんに声をかけてもらって……最初は務まるかしらと不安だったんですが、“孫が出来た時にでも語って聞かせる事が出来たなら”と軽い気持ちで民話会ゆうづるの会員になったのが発端なんです」そう言って、多勢さんは懐かしそうに笑う。
 ためらいながらも引き受けて、気がつけば18年。日々の修錬もさる事ながら、多勢さんには人をひきつける「語り部の資質」があったのかもしれない。
「鶴の恩返し(夕鶴)」の発祥の地と言われる珍蔵寺
明るい笑顔が印象的な多勢さん

 

“ 語る喜び ”を知る──最初のうちはご苦労も多かったのではないですか?

「昔話を覚えるのに必死でしたが、夕鶴の里で専門研究員を務めていらした武田正先生のご指導はもとより、会員の皆さんの語りを聞いて勉強しました。そのうち、語りの出前要請を受けるようになって、各地を訪ねて回るようになりました。色々な人と出会う楽しさに気づいてからは、いっそう面白くなって。今では東北を遠く離れた場所からも講演に呼んでいただいて。本当にありがたい事です」
 実際、取材にお伺いしたこの日も赤湯幼稚園で語りを交えた『子育て講演会』の講師を務めた多勢さん。
 時に笑わせ、時に涙を誘うような話をたくみに織り交ぜて、若いお母さん達に子育ての喜びを語る姿は、本当に活き活きとしていた。
この活き活きとした表情が聞く人々を笑顔にする。
多勢さんの語りの魅力に引き込まれ、真剣に耳を傾ける聴衆。

 

南陽市漆山への誇りと原点──数多くある民話の中で、一番好きなお話は何ですか?

「何といっても鶴の恩返しです。あの話があるからこそ、漆山、そして南陽の素晴らしさを伝える事が出来るんですから。私の原点ですよ。人の優しさや繋がりを教えるのに一番いい話じゃないですかね」
 現在、100話以上のレパートリーを有するという多勢さん。もしかしたら「どの話も好きです」と無難な答えが返ってくるかもしれないという予想を裏切り、多勢さんはきっぱりと答えた。
 郷土への誇りを胸に、未来を担う子供達へ民話を通して“人の繋がり”を教える。そんな志があるからこそ、多勢さんの語りに惹かれる人は後を絶たないのかもしれない。
 昔話に郷土愛をこめる、そんな彼女の姿こそ『なんようの匠』と呼ぶにふさわしいものではないだろうか。
「夕鶴の里」にて多勢さんのいつもの場所に座ってもらう。
一瞬はにかんだ様子が可愛らしかった。
南陽市漆山にある「夕鶴の里」
多勢さんの拠点でもある

 

 

 

多勢 久美子(たせ くみこ)

語り部歴18年
南陽市漆山地区在住

南陽市を中心に県内はもとより
県外でも幅広く活動中

年間平均約70回講演

民話会ゆうづる所属 芸文やまがた語り隊

■2011年6月取材

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